初期設定
主人公:水野綾乃  (別れる)彼氏:福原和人(カズ)  綾乃の好きな男:茂樹(シゲ)  綾乃の友達:青山千夏
現在、綾乃は和人と付き合っているが、茂樹に恋をしてしまった。(告白したのは茂樹)
中途半端な気持ちではいけないと、綾乃は和人に別れを告げようとする。
まぁ、書いてない部分は、ある程度は想像してください。





どうしたら言える?

他の人が好きになってしまったなんて。

「飯食べに行こうか。」

「うん。」

「?どうした?元気ないみたいだけど風邪でもひいたのか?」

「ううん。そんなことないよ。ちょっと考え事してただけだよ。」

「そっか。なら行こうか。」

言えるわけない

こんなに優しいあなたを傷つけたくないから・・・。





「よっ!」

彼はいつものようにジャングルジムの一番上に立った。

彼は高い所が好きだった。

私もそんな彼に影響されて、よく高い所に上がる。

だからどうしてもズボンを履くことが多かった。

「なぁ。悩み事って言えないことか?」

彼の大きな声が空に響いた。

「う〜ん。これはちょっと言えない。」

「そっか。じゃあ頑張るんだよ。」

「うん。ありがと。」



今さらでも思う。

彼は優しい。



私をよく理解してくれるし、プライベートも尊重してくれる。

決して私を傷つけないように努めてくれるし、無理を押しつけることもない。

本当に最高の彼氏だ。

・・・だけど私はよそ見をしてしまった。

どうすればいいの? あなたへの心を取り戻すには。

これを考えている私自身がすごく嫌。

消えてなくなればいいのに・・・。





今日はあまり眠れなかった。

夏休みまで、後3日。

もし何か気まずいことをこなすには絶好の日である。

はぁ。

「どうしたの?何か今日はよくため息ついてるけど。」

私を心配してくれてるのか千夏が声をかけてきた。

「ははっ。大丈夫。ちょっと考え事してるだけだよ。」

「あんたに悩みなんかあるの?幸せの塊みたいな女のくせに。」

「そっそんなことないよー。」

「だって家は金持ちだし親だって感じいい人だし、何よりあんなにいい彼氏いるじゃんかさ。」

「家も親は普通だよ。」

「んじゃ彼氏は??」

すごい笑顔で千夏が尋ねてきた。

「ははっ。そりゃ・・・ね。」



思わず苦笑いしてしまった。

こんなに最低な女と付き合ってくれるこの世で唯一の人かも知れない最高の彼氏。

「はぁ。」

「本当にどうしちゃったんだろうねぇ。彼と何かあったの?」

「・・・。」

「こりゃ重症やね。」





本当はどうすればいいのか分かってる。

そう、ただ別れを告げるだけのこと。

でも覚悟とは裏腹に、彼がとても愛しい

どうか私を嫌いになって・・・。





「おーい!水野!」

ふり返るとシゲ君がこっちへ走ってきた。

「どうしたの?そんなに慌てて。」

「お前が辛そうな顏してたからな。」

「ははっ!ありがと。」

「・・・何かあったのか?」

「う〜ん・・・でも話してもしかたがないことだしね。」

「気にしないで言ってくれればいいよ。」

「・・・どうしたらカズ君を傷つけないで別れられるかを考えてたの。」

「単刀直入に言うのが一番じゃないのかな?」

「それができたら苦労しないよ!!」

「・・・そんなに大事なんだね。」

「・・・あの人は空気みたいな人だから・・・。あの人がいなくなったら私は死んでしまうかもしれない。

そんなに大事な人だったからこそ、傷つけるのが怖い!」



私はそこで泣き崩れてしまった。

今日はカズ君が部活に出る日だけど、顏を合わせずに帰った。

一人で帰る通学路が何故かいつもより暗く思えた。

息が詰まるような暗さから逃げるように、早足で家まで帰った。





その日、私は彼へ、お別れの手紙を書いた。伝えなければならない事を数行にまとめて・・・。





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