名古屋には、とある喫茶店がある。
店の名前は「マウンテン」。取材も良く来ている程の人気がある店だ。
私たちは、その店に行く事を、敬意を称して「登山」と呼んでいる・・・。
無論、そう呼ばれるには、理由があった。
幾人もの猛者達が、その険しさに挫折しては引き返していくのだ。
私たち、ハルヤ含む4人は、その険しい山を攻略すべく、立ち上がった。




平成17年 3月24日(木) PM 1:30



その日は暑かった。
寒くなったり暑くなったりと、おかしな天気が続く中、私は、とある店の前にいた。

その横に、あー君(♂)(仮名)、魂翠(♀)、BOM(♂)が、そこにそびえたつ山の恐ろしさも知らず、 登山する期待に胸を膨らませ、待っていた。

ちなみに、私がこの山に挑戦するのは2回目である。

その時は、yukiとtrishの2人と一緒であった。

あの時は、今横にいる3人と同じように、ただ好奇心だけの幸せな気分だったはずだ。



あー君「やたら混んでるね。」

ハルヤ「確かに。わざと混んでない時間を選んだつもりだったんだけど。」

BOM「腹減ったね。」

ハルヤ「俺も。朝飯食べてないし。」

魂翠 「女の人少なくない?」

ハルヤ「まぁ・・・しかたないんじゃない?凄い所なわけだし。」



結局、店に入るまでに15分は待った。

待つのが、凄く嫌いな私にとっては、1時間くらいに感じた程だ。

店に入り、4人用のテーブルにしては、明らかに小さいが、この大きさ以上のテーブルは、

この店にはないため、わがまま言わずに座る。

とりあえず、メニューを出してもらって、各自何を食べるかを考えることにした。



・・・そう。

この店は、かなり変わった料理があるのだ。

しかも、1目瞭然。

その変わった料理を頼み、食べる事を挑戦することを「登山」といい、完食する事を「登頂」と 呼ぶ。

今回は、一度経験したということで、私が登山する事に。

以前来た時は、yukiが登山した。

あとの3人は、あー君とBOMが、ちょっと謎な名前のものを。

魂翠は、無難そうなメニューにする。

・・・じゃないと、口直しできませんから^^;



私のメニューは、すぐに決まった。

怪しげなメニューの中から、「甘口スパ」の項目にあるソレを指差した。

ハルヤ「甘口スパの、イチゴスパにする。」

魂翠 「おー!・・・だけど、大丈夫??だって、ハルヤ君は甘いのダメなんでしょ?」

ハルヤ「人間、やらねばならぬ事があるのさ。見ててくれ!俺の生き様を!」

魂翠 「だけど・・・アレだよ?きっと。」

魂翠が指差した先には、桃色のパスタに、生クリームがタップリなパスタを食している女性がいた。

女性 「もう・・・食べたくない・・・。」

小声で聞こえるソレは、一瞬にして私を凍らせた。

ハルヤ「・・・やっぱ、他のにしようか・・・な。」

魂翠 「まだ、バナナスパの方がいいんじゃない?」

ハルヤ「キウイスパでもいいんだけど。」

魂翠 「多分、もっと凄い気がするんだけど・・・。」

その一言で、私はバナナスパにする事に。

ちなみに、yukiが以前頼んだのは「抹茶小倉スパ」。

パスタに、抹茶の粉が贅沢にかかり、その上に生クリーム+小倉+チェリーだった。

あの、モチモチとした歯ごたえは、今でも思い出せそうなくらいだ。

・・・せめて、アレよりマシである事を祈ろう・・・。





注文してから、20分近く待つ。

その間に、先ほどの登山者(イチゴスパ)は、引き返していった。

きっと、当分の間、イチゴは見たくなくなるだろう・・・。

そして・・・。












バナナスパ(ハルヤ)

コスモスパ(左:あー君)    コーンスープスパ(右:魂翠)

うどん風カレースパ(BOM)



キターΣ( ̄□ ̄;)

前方に、未確認物体を発見致しました!!

至急、危険物取り扱い班を要請します(笑)

・・・というか、来ましたね(ぉ)

そびえたつソレは、富士山にも見えるようであった。

ちなみに、コスモスパは、すき焼きの中にパスタが入ってる感じ。

コーンスープスパは、コーンポタージュにパスタが入ってる感じ。

うどん風カレースパは、恐らく激辛のカレールーを、とりあえず水の規定分量よりも少ない量で 無理やり溶かした中にパスタが入ってるって感じ。

残念ながら、皆まともなメニューでした(ぇ)

ハルヤ「では・・・まずは1口。」

フォークにからめようにも、スルスルと抜けていくパスタを、必死に捕まえながら口へと運ぶ。

ハルヤ「うぐっ!!」

ハルヤのお腹に20のダメージ!!気力が1減少!!

パスタにも、しっかりとバナナ風味が!

ほら、アレですよ。

コアラのマーチとかでも、バナナ味って出たでしょ。

アレの味が染み付いてる感じ。

しかし、ためらったら負けだ!

間髪いれずに、一気に何度も口へと運ぶ!!

空腹感があるうちに食べないと、ホントに食べたくなくなる。





あー君「・・・大丈夫か?」

肩で息をする私に、あー君が優しそうな声でなだめた。

てめぇは、人様が食べられるような物食べてるから分かんねぇんだよ!(ぉ)

私は無言で、バナナスパを、あー君の皿へと盛った。

あー君「あ゛!」

間髪入れずに、BOMにも魂翠にも。

・・・。

冷たい視線が突き刺さろうが、もう気にもならない。

死ぬ時は一緒だよな、親友よ(笑)

一応、暗黙のルールとして、登山メニューは協力してでも登頂しなくてはならない。

つまり、今回の行動は、法で裁かれても無罪は確定だ。



あー君「うわ!凄い味・・・。」

BOM「これは・・・凄いね。」

魂翠 「チョコバナナの匂いがする・・・。」

とりあえず、パスタの上に散りばめられた黒い宝石(チョコ)と、冬の間に積もったで あろう雪(生クリーム)が、食欲を大幅に落とさせた。

これは、あー君や魂翠が、少し手伝って食べてくれたから終了。

しかし、私は気づいていなかった。

本当に恐ろしい食材が残っている事を・・・。



口直しにと、私はバナナを口へ運んだ。

バナナは、比較的好きな部類に入るのだが、この時だけは違った。

ハルヤ「吐きそうな位、気持ち悪い・・・。」

散々食べたバナナ風味をさらに増長させたのだ。

さすがに水で流し込もうとするが、これが裏目に出て、逆に口一杯に味が広がる。

頼む!俺にも普通のメニューを!

無意識のうちに、私は悲観的な思想で、頭が一杯であった。

しかし次の瞬間、私はふと思った。



ハルヤ「(なぁ〜んだ。おいしそうな物が沢山あるじゃないか)」



私は、あー君のパスタを、恐ろしく早い手つきで口へと運んだ。

きっと、あー君は見えていなかったであろう・・・。

なんせ、横にいる魂翠に、四六時中見惚れているからだ。



ハルヤ「(ふっ・・・。まぁまぁだな。)」



次に、私のフォークが向かったのは、BOMのパスタだった。

先ほどと同じように、凡人には到底見えない程の速さで、パスタの強奪を仕掛けた。



    「カキーン!!」

ハルヤ「!?」



私のフォークが弾き飛ばされた。



BOM「見えぬと思ったか?」

ハルヤ「ちっ!このスピードでは無謀だったか・・・。」

BOM「・・・というか、そんなスピードでパスタ取ると、俺の服にカレーがかかるから。」

ハルヤ「あ・・・そっか。」



会話の最中に、何気なく食す。

口の中が、甘いのか辛いのか分からなくなってきた。



魂翠 「私のも食べる?」



パスタの取り合い(?)に気づいたのか、対面に座る彼女から優しい声が響いた。



ハルヤ「ん。食べたい。」

魂翠 「はい。あ〜ん、して★」

ハルヤ「あ〜ん♪」



いつの日か、彼女ができたら、こんな幸せな時の連続なのかな・・・。

今までに、幾人の彼女がいながら1度もしてもらった事のないソレを、ただ呆然と見ていた あー君が気づき、今にも殺してやろうか、という程の殺気を向けてきた。



ハルヤ「あー君。嫉妬するなよ。代わりに、このバナナあげるからさ^^」

あー君「丁重にお断り。」

ハルヤ「・・・もう、コスモスパの具になってるよ?」

あー君「あ゛!何、バナナなんて勝手に入れてるのさ!」



・・・まぁ、そんなこんなで、バナナスパという山を登頂する事に成功した。

この道のりは、あー君の犠牲をはじめ、4人の連携があってこそであったと思っている。

私は、今日この日に登頂したと、山頂に旗を立てる事にした。

最後にとっておいたチェリーを、皿の上に立つように食べる。



ハルヤ「登頂、完了だ。」












バナナスパ(ハルヤ)

コスモスパ(左:あー君)    コーンスープスパ(右:魂翠)

うどん風カレースパ(BOM)



その後、4人でカラオケ、夕食、ボーリングと、散々遊んで帰宅。

合計12時間以上遊んだという、本当に有意義な時間であった。

あー君、写真ありがと。仕事、頑張って。

魂翠、研修中の下宿先に、遊びに行くからね★

BOM、ディーゼルの免許、受かってたらまたパーっと遊ぼう!

最後に、読んでくれた人も含めて、お疲れ様でした。

また、遊ぼうな(〃▽〃)



※なお、台詞などが一部おかしい所がありますが、そういう所はほぼフィクションです。




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